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配布された成績データと担任の渋い顔を胸に抱いて、わたしはヒノエの教室へと向かっていた。

普段はあまりそちらの棟には行かない。

わたしは人文学部、ヒノエは芸術学部。

校舎自体は間にひとつ挟んだだけなものの、生徒同士に面識はあまりない。
 

昨日寮では会えなかったから、今日のうちに顔をあわせて明日は一緒に帰れないことを伝えるつもりだ。

もっとも、ヒノエだってわたしの謹慎ぐらい既に知っているはず。
 

事実、彼の教室に辿りつく一歩手前、帰るつもりであろうヒノエと目があった瞬間、至極呆れたため息を零されたのだから、間違いない。


「成績は?」でも開口一番の話題は違った。

「聞かなくてもわかるでしょう」わたしの返事にその眉が歪む。

「いい加減、本気出したら」そして加わる渋い声。

わたしはそれには曖昧に笑っておくだけにした。