そこにはたくさんの絵画が、迷路のように組まれたパネルに飾ってあった。
係員なのか展覧会のポスターの横に男のひとが座っている。
そのひとに入館パスを見せ、道順の案内表示を辿ってわたしは探しはじめた。
水彩、油彩、水墨画にエッチング。
様々な作品の下にあるプレートをチェックしながら進む。
ひとつひとつゆっくり見る気分にはなれなかった。
絵を見に来ていたひとには申し訳ないけれど、時折立ち止まるひとの横からのぞいたりもした。
そうしていくつもの作品を通り過ぎたところで、壁面に堂々と飾られたふたつの絵に辿りついた。
ふっ、とミントの香りがした気がする。
それは、この展覧会の目玉扱いだったのかもしれない。
一番いいポジションに、一番スポットライトを浴びて、並んでいる。
ひとつのタイトルは『瑠璃の羊』
ひとつのタイトルは『瑠璃色のかがやき』
まるで計画してつくったかのような、奇妙な符合点に思わず目を見張る。