「わかってるよ。行く。行ってくる」
「どこに?」
「わかんない、わかんないけれど、見つける」
「無計画だね」
「うん、だけどそれぐらいは本気になってみようかな、と」
いつの間にか周りの視線は気にならなくなっていた。
消えたわけじゃないのに、そこにいて明らかにこちらを見て怪訝な顔を浮かべているのに、どうでもいい。
立ち上がるわたしをヒノエがまるで追い払うように手を振った。
それにちょっとだけ歯を剥いて、鞄を持ち上げる。
「ほんとう、北風には参るわ」そう言ってやるとなんの話だと言わんばかりに眉根を寄せられる。
それにまた笑って、わたしはひとり教室を出た。
「いってらっしゃい、ニイ」
そんなあたたかい声を、背中に聴きながら。