「ついでに、レディファーストなんて古い概念、はやく捨てなよ。扉なんて自分で開けれるでしょう? 開けてくれるの待っててぼーっと突っ立てるぐらいなら、さっさとドアノブ捻ったほうが簡単だからね」
「なにそれ、レディファーストなんて物語の中の話だけでしょう?」
「お前は小説の世界が好きだから。親切な忠告だよ」
唐突な話題に笑うと、ヒノエも僅かに笑ってくれた。
それはとてもめずらしいことで、なんだか気恥かしい気持ちにさえなってくる。
「お前がされたいことをやってあげなよ。いつまでも腐ってぼけっとしてたって、なにも変わらないんだから、ニイ」
そう言いながら、ヒノエが一枚のハガキを机の上に置いた。
『全国高校生絵画展覧会』とスタイリッシュなフォントでそこに表示されている。
場所は国立美術館だ。