*

 
学園になにもかも戻ってきたというのに、そこだけはやっぱり埋まらなかった。

休みが終わり寮に戻ってきたわたしを、キッカはほんのすこしだけ、かなしい瞳をして迎えてくれた。

でもその表情は、こうなることを予測していたようにも見えた。
 

だけど周りはなにも変わらない。

悲しいぐらいに。ひとりの生徒が辞めたことにむしろ気がつかないぐらいに。
 

わたしもそうだ。

コンタクトレンズを入れ、皮の手袋をはめ、また窮屈な日々へと戻る。

優秀でおりこうさんなジーンリッチに囲まれ、これ以上目立たないようにひっそりと息をする。


「なに腐ってんの」
 
変わらないのはこのひとも一緒。

放課後の教室で動けないままだったわたしのところにヒノエが迎えにきてくれた。
 

その行為に、残っていたクラスメートがひそひそとなにかを離している。

おおかた、自分たちとは違うと思っているものを話題にして、笑っているだけだろう。
 

そこに意味なんてないのに。