それからいくつかの花火を見送った。

言いたいことは喉まで出かけているのに、ことばになってはくれなかった。
 

手をつないだことに満足? 違う。
 
反応が怖くなった? 違う。
 

わたしは、ただいつまでもこの時間が続けばいいなと、思ってしまったんだ。


「あのさ」
 
だけどそれは、絶対にありえない。

いつかは花火も、夏も、休みも終わる。
 

ナギ・ユズリハの声に横を向く。

彼は空を見上げたままだった。


「学園には、たぶんもう戻らない」
 
それはとてもクリアな声で、淀みなんてすこしも感じられなくって。
 
周りの音を、一気に制してしまった。


「やめるの?」
 
そんななか、わたしのことばはただの雑音だった。

なんと反応していいのかもわからず、戸惑いだけが音になって発せられる。
 

ナギ・ユズリハは静かに顔をさげてわたしを見る仕草。

「ああ」という声。

すべてがスローモーション。