言わなくても通じる、なんて甘いことは考えていない。

言わなければ通じないことのほうが多かった。

それは幾度となくヒノエにも言われたこと。

口に出さずに伝わるんなら、世の中正常に動いてないだろうね。お前も勝手に理解されてるなんて思わないことだよ。

そう、冷たい視線を投げかけられながら。
 

だからわたしは言わなければいけない。

その手は、この目は、わたしは。

 
ナギ・ユズリハはわたしの手をしっかり見て、それからまるで絵筆を握るように、つかんでくれた。

つながった両手が冷たい地面の上へと落ちる。
 

黒い模様の手と、白い包帯が巻かれた手。

欠陥品と烙印を押されたものと、欠陥品になりたかったもの。
 

その指先がとても冷たく感じるのは、きっとわたしの体温が高いせいだろう。

細い指は思った以上に肉が感じられず、ごつごつとしていた。