ひゅうっ、とタイミングよく次の花火があがる。
わたしはすこしの期待を持って、その行方を見守る。
開いた火花は、青色だった。
自分でもびっくりして、思わず隣を見る。
ナギ・ユズリハはほんのすこしだけ口角を上げていた。
花火が消えていくのと一緒に、顔も暗闇にとけてゆく。
「なに?」ナギ・ユズリハがそっと聞いてくる。
わたしは、ゆっくり自分の右手を伸ばした。ヒノエが座っていた空間に。
その手を、次の花火が浮かびあがらせる。
「手、握って」
わたしの手を。
黒い痣のある、欠陥品の手を。
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