どうして。

そのことばが掠れてしまった。

わかる、だなんて。

兄も妹もジーンリッチで、あの両親の遺伝子なんてまったく受け継いでない、どこの誰のものとも知らない遺伝子が親だっていうのに。


「似てる」まるで息を夜空にとかすみたいに吐く。

「お互い」続いたことばは、花火と共に弾けて落ちた。
 

わたしと兄、ではなく、お互い。

ナギ・ユズリハに兄弟はいないのに。
 

先日出逢ったおじいさんを思い出す。

わたしは、聞いてしかいないから、彼のことをわかるとは言えないけれど。
 

でもそう、もしそうならば、わたしたちはもっと近づけるのかもしれない。
 

もしそんな予感をわたしの本能ってやつが感じて、名前に恋をしたのならば、これって運命ってものなんだろうか。

ウンメイ。そんなもの、物語のなかだけだと思っていた。
 

それに、やっぱりなんだか似合わない。

だって名前だけで、そんなことが感じとれるのなら――いいや、頭のなかなんて見たことがないんだから、わからないか。
 

ああ、そうだ。それにわたしは彼の名前だけに惹かれたわけじゃない。

きっと、あの絵があったからだ。

瑠璃色の、羊。