「うん。ヒノエに聞いた?」
「いや……ほんとうは、ずっと前から知ってた」
しゅるしゅる。そう音をあげて花火は確実に空を昇り、花びらを散らす。
その鼓膜をゆらす音に混じっているのに、クリアに聞こえる声。
「イチイ・アマハネ」
ナギ・ユズリハが兄の名を発する。
なんだかまるで、別人みたいに。
「ずっと、その名は聞かされてきたから」
そうしてすうっと、息を吐いた。
「でもよくわかったね」
たぶん公表されてないのに。公表っていうのもおかしいけれど。
単に誰にも言ってないし、誰もそうと思わないだけ。
「アマハネってめずらしいから」
「そう? ああ、こっちじゃたまにあるんだけど、そうかもね」
「うん、だけどそうじゃなくても」
今度は金色の枝垂れが空を彩った。
「たぶん、わかる」