ぼうっと空を見あげる。
そんな最中、ヒノエがポケットから携帯端末を取り出した。
横目で見てると、どうやらコールがかかってきたようだ。
「うん、うん……わかった」
電話の相手は誰だか知らないけれど、随分と返答はそっけない。
プラス、その眉根がきゅっと寄って、非常に不機嫌そうな表情をつくりだしている。
「悪い、呼び出し」
その声に「お父さん?」と聞くと「裏方」とだけ答えられた。
そうか、ヒノエももう男衆の輪に呼ばれるのか。
一人前の男に近づいているんだ。
「悪い、もし遅かったら先に帰っててくれ。ニイ、頼んだ」
それだけ残して、ヒノエは来た道をすこし急いで戻っていった。
夜の酒盛りにまで付きあわされることはないだろうけれど、きっと花火が終わっても帰ってはこれないだろう。