このちいさな田舎の寂れた場所に集まるひと、ひと、ひと。
その誰もがたのしそうで、うれしそうで、その気持ちが伝播して、場所全体に蔓延しているみたいだ。
たぶんわたしにも。
各々買い物を済ませたところで、神社をすこし離れた場所へ移動する。
昔から花火を見ていた場所。
それはなんてことない土手なのだけれど、みんなは露店に夢中だし、大きな建物のない田舎ではどこからでも花火は見えるし、ずっとわたしとヒノエの特等席だった。
虫の鳴き声をたずさえて流れる小川の端に三人並んで座る。
神社の喧騒からすこしはなれた夜空には、ベガが輝いていた。
しばらくなにげない会話を繰り返して、たとえば畑仕事の話とか読んだ本の話とか、各々露店で手に入れてきたものを少しずつかじる。
休みがはじまる前は、必要最低限のことばしか交わしていなかったふたりの会話が、今ではとてもスムーズに紡ぎだされている。
たぶんそれは、わたしよりも近い。
同性だからこそなのかもしれない。
それがちょっとくやしくて、うらやましい。