その向こうに座っていたナギ・ユズリハは、なにも表情を変えていなくてこっちが拍子抜けしてしまった。
もしかして暗いがゆえに気づいてないのだろうか。
まあ、それならそれでかまわない。
声を大にして主張したいわけでもない。
三人並んで、露店が並ぶ小さな神社へと向かう。
日はすでに落ちていて、遠くから祭囃子が聞こえてきていた。
田舎の一本道を淡く照らす提灯の列。
その明るさに星がすこしだけ姿を潜め、これから咲く花火の場所を空けている。
細い月は山のうえで待っていた。
わたあめの甘い香りが風にのってやってくる。ソースが焦げる匂いもする。
神社に近づけばひとも増えていって、他の道からきた知り合いに声をかけられたりもする。
ヒノエとわたしはそれをいつものようにうまく交わして、露店の並ぶ場所へと逃げていった。
ナギ・ユズリハは良い意味での余所者に注がれる視線も気にせずに飄々と歩いて、小さな会場を眺めていた。