もう一度、鏡の中のわたしを見る。

手元に置かれた、コンタクトレンズのケース。
 

まばたきを三回して、わたしはケースを抽斗の中へとしまった。

いいんだ、今日のわたしには必要がない。

一緒に、皮の手袋も押しこむ。
 

だって、ここはわたしの生まれた土地で、隠す必要なんてなくって。
 
それに、わたしは今日、告白するのだから。
 
そもそも浴衣に皮の手袋なんて、似合わない。

 
深呼吸、ひとつ。慣れない下駄に足を入れて、外の世界に出る。

 
ヒノエの家に向かうと、すでにふたりは準備を終えていて縁側で待っていた。

わたしは浴衣を着ても、ふたりは普段通り。

日に焼けた顔が、居間のライトに照らされている。


「お待たせしました」そうはにかんでみると、わたしの手を見てヒノエの眉間にしわが寄った。

そのあとわたしの顔をまじまじと見て、さらに顔をしかめる。

でもたぶん、ヒノエは怒らない。

きっと、わたしがあの学園に反旗を翻したって「馬鹿だね」のひとことで終わりなのだ。