暗闇に一瞬だけ咲いて、消えていく、花火。
 

今年は、人生ではじめて、違うひとと行く。

だけどそれは、古い恋愛小説にみるような淡い期待としあわせに満ちたようなものじゃなくて、どこかせつなくて、すこし悲しいものになる予感があった。
 

誘ったのは、わたし。

それを相手はどう受けとめたかわからない。

でもたぶん、さしてプラスの感情に動いてはいないだろう。

彼のことだから、そんな気がする。

 
お祭りの日だって、農家は休まない。

その代わり、いつもより幾分はやく仕事を切り上げて、各々準備をはじめる。
 

わたしもいったん家に帰って、シャワーを浴びてから浴衣に袖を通す。

毎年、この日だけに着る服。

紺地に朝顔の浴衣は、同級生の子たちに比べるとどうしても地味だったけれど「顔が派手なぶん、そのほうがバランスいい」という褒めてるんだかけなしているんだかわらからないヒノエのことばのおかげで、ずっと好きでいられた。
 

鏡の前に立って、髪を乾かす。

前髪をひねって膨らまし、髪留めをさす。

化粧はしない。してしまうと、ヒノエのいうバランスが、激しく崩れてしまう。