「コチヤさん、という方の家を探しているのですが」
 
その声はとても丁寧で、やわらかかった。品の良さそうなひとだ。

クラシックカーの中もよけいなものがなく、きれいなままだった。


「コチヤなら知っていますが……」
 
ヒノエの家ならあながち間違ってはいない。案内も楽に済みそうだ。

そう思いつつ答えるとわたしの声になにを感じとったのか「ああ、失礼しました」と男性はにっこり笑う。


「ユズリハと言います。孫がそちらにお世話になっているようでして」
 
その名に思わず顔をあげる。

まったく似ていない。そう思ってから、ナギ・ユズリハはジーンリッチなのだから当たり前だと気づく。


「おじいさんですか」
 
なにを言っていいかわからず、困ったわたしに、彼はやわらかく微笑んでくれた。


「はい。同じ学校の生徒さんですか?」

「あ、はい。ナギ……さんのクラスメートのコチヤの幼馴染です」

「そうですか」と微笑みは満面の笑みへと変わる。

ほんとうにナギ・ユズリハとは似ていない。表情のかけらも、仕草のひとつも。