ふと考える。

兄が太陽だとしたらわたしはきっとあの入道雲だろう。

空のてっぺんをゆっくりと進む太陽を、地上近くに発達するあの雲は隠せない。

では届きもしないことを入道雲はどう思っているのか。

きっと、届くかもしれないなんてこと、考えてないんだろう。
 

もうひとつ、考える。じゃあナギ・ユズリハは。

月だろうか、星だろうか。

ひっそりとしたこの雰囲気には、月が似合う。

だけど彼はきっと、その明かりが誰かの足元を照らしていることを知らないだろう。
 

それと、ヒノエは北風だ。まちがいなく。

 

午後からは出荷の準備。

そうやって一日を終え、わたしは晩ご飯を食べに家に帰り、父と母といくつか言葉を交わして、眠る。

兄は仕事に戻るから、と申し訳なさそうな顔を残して、外国へとまた出ていった。

わたしに余計なことを言うことなどない。

海外の写真とわたしの好きそうなもの、と兄が考えたものを置いていっただけ。
 

休みの間はこの繰り返し。

わたしは朝日が昇る前に家をでる。

ヒノエの家でみんなに合流して、土まみれになる。

それがしあわせで、楽しいと思えるぐらいには、わたしは普段のあの狭い生活に辟易している。