大きなおにぎりと、野菜たっぷりの煮しめ。
畑で採れたばかりのとうもろこし。
夏の暑さにやられながらも、みんなの顔はとても清々しい。
だからナギ・ユズリハはどうしても目立つ。
彼は普段とちっとも変らなかった。
むしろこの太陽と空気が暑くないのか疑問に思うぐらい。
長い髪も、白い肌も、不自然なほど涼しそうに見える。
「やっていけそう?」
縁側の端、冷たいお茶を飲んでいた彼の隣に座る。
わたしの顔を見て、ナギ・ユズリハは「ああ」とだけ頷いた。
ぬるい風が、頬をなでてゆく。
わたしは梅干しが入ったおにぎりを、思いっきり頬張ってゆく。
縁側から見える空がひろい。
遮るものを持たない太陽が、作業靴を脱いだつま先を焦がしてゆく。
庭を彩る向日葵、鳳仙花、鶏頭。その甘い香りが風に乗ってやってくる。
山の端に入道雲がのっていた。夕方、雨が降ってくれるかもしれない。