ため息ひとつ、畑に溶かす。
そして考える、わたしは、どうして中途半端に生まれてきてしまったのだろう。
 

答えないわたしにヒノエもため息をついて、作業を再開した。

わたしも真っ赤に熟れたトマトを丁寧にもぎ取ってゆく。


「下手に自分に自信があるから、そうなるんだよ、ニイ」
 
トマトの緑の向こう側。

ヒノエはそう呟くように言って、顔をあげた。

そうして自分を呼ぶ声に反応して、わたしを置いていった。
 

わかってる。でもわかってるって、いったいなにを。

 
不意にまだ赤くないトマトを手に取った。

茎から離れた瞬間の、青い匂い。

そのままひとくち齧りつく。甘くも柔らかくもない。酸っぱさと渋みだけが、口の中に広がった。

 

午前中をトマトの収穫に費やし、お昼をそろって食べる。

そろって、というのはヒノエの家族とナギ・ユズリハのような短期のお手伝いさんたちみんなでということ。

おおきな家の開け放たれた部屋にめいめい上がりこんだり、その縁側に腰かけたりして、お昼ご飯を頂く。