久しぶりの我が家は、玄関にもライトが灯されていた。

淡いオレンジの光が扉を照らしている。

そしてその横、窓から漏れるかすかな光。

母は晩ご飯の準備をしているのだろう。

カレーライスの香りがする。わたしの好きな、甘い、カレー。


「ただいま」
 
深呼吸をひとつしてから、扉を引く。


「おかえり」
 
目の前に現れた姿に、わたしは呼吸を止める。

似ても似つかない姿。

それもそうだ。だってこのひとも、ジーンリッチ。

しかも、完璧な。


「久しぶりだね、ニイ」
 
一位の兄、二位のわたし。
 

柔らかい頬笑みは、どこまでもわたしを包んでくれる。

これ以上ないぐらいの劣等感で。