三人ならんで、田舎道を歩く。

ヒノエは相変わらずヒノエで、許諾は得たものの突然やってきたナギ・ユズリハに動じもしなければ遠慮もしない。

「明日から、頑張って仕事してもらうから」
「働いている限りは、家にいてくれて結構」
そんなことを淡々と語っている。

その声はとてもスムーズで、ほんとうに今まで疎遠だったのかとこちらが聞きたくなるぐらいだ。
 

わたしはその様子を横目に、久しぶりの帰路を眺める。

なにも変わらない夕焼け。
田んぼも畑も青々としていて、草いきれの香りがほんのり湿った風にのってやってくる。

願わくば滞在中に二度ぐらいは、雨が降ってほしい。

一度は昼間の雨で、もう一度はよく晴れた日の夕立。
一緒に雷も鳴ればいい。

わたしは、また、あの日のような稲妻をこの目で見たい。


「じゃあ、また明日」
 
田んぼの中にある別れ道を前に、わたしは言う。

はやく明日になれ、そんな願いを込めて。


「ああ」ふたりは並んでそう答えて、ヒノエの家のほうへと向かってゆく。
 
わたしはひとり田んぼのあぜ道を、滑らないように気をつけて歩いて帰る。