「あと、ヤマギワの言ったことは気にしないで。もしどうしても気になるなら、本人に聞いて」
 
そこまで加えて、ようやくわたしを見た。

そして彼は少しだけ悩むように目を瞑り「わかった」と小さく頷いた。

 
そうして、わたしとナギ・ユズリハは謹慎を終え、同じ場所へと向かった。

謹慎が終わったからといって何があるわけでもなく、キッカに課題を提出してお礼を言って自由の身。

ヤマギワはもう嫌味を言いにも来なかった。それでいい。
 

小さな鞄ひとつずつ持って。

もうすでに窓から見える景色は緑一色。
学園がある都市とはえらく違う、森と田園、ときどき家。


あまり乗客のいない古いバスに縦に並んで座って、わたしの家に一番近い停留所まで揺られている。

「すごいな」
 
後ろの席でナギ・ユズリハがぼそりと零した。

なにに対してかはわからない。

だけど漠然と、窓の外の風景にだろうな、と思った。