わたしは、わたしはなんだと言うのだろう。

「わたしも、コチヤの家で手伝いをするんだけど」
 
それが毎年恒例で、と続けると「違う」と遮られた。


「行って、平気なのか」
 
言葉足らず、というのはこういうことを言うのだなと感じてしまった。

あいにく彼の発言は何に向かっているのかもわからなかったし、その節々に感じられる遠慮が誰に向けられたものなのかもわからなかった。


「ええと」
 
そうなれば、わたしからぶつけねばならない。

「ヒノエに遠慮してる? この間ヤマギワが言ったこととか、気にしてる?」
 

わたしだって触れたくないものはある。

いやこれをヒノエ自身に言ったところで、あの男は微塵も動じないだろう。

だから何、で終わらせることのできる変わった人間だ。

だけどその問題とは無関係のわたしが口を挟むのには抵抗があった。

だって、ナギ・ユズリハがヒノエのことをどう思っているかは知らない。