だって、わたしとヒノエとナギ・ユズリハは、気の置けない友人、という関係ではないだろう。
 

彼にとってわたしは“たまたま謹慎期間が重なった同寮生”でしなかく、ヒノエは“絵画コースのクラスメイト”でしかない。

よしんばわたしとはほんの少し会話をする仲まで縮まったとしても、ヒノエに聞く限りでは、ほとんど会話らしい会話をしたことがないに等しい。
 

そんな状態のひとたちに、突然こんなことを言われたところで。
 

わたしが彼の立場だとしてもそう思っただろう。

だからこそ、多少強引にでも誘ってみたかった気持ちもある。


「強制じゃなくて、勧誘です」

「……コチヤは」

「もちろん了承は取ってある。人手はいくらあっても欲しいらしいから、大丈夫」

「じゃあ、あんたは」

「え?」
 
ベンチの前で、座るわけでもなく交わされる言葉。

そのひとつに疑問符が浮かぶ。