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「ほんとうに、いいのか」
 
その言葉になにをいまさら、と思ってしまった。

でもそうなのだからしかたがない。

すでに路面電車を乗り継ぎ、バスに揺られてここまで来た。

やっぱりやめると言うならば、今から来た道を戻ってもいいけれど、きっと夜は更けてしまう。

そうなればあの寮にだって入れやしない。

 
昨日、最後の謹慎日。
 
朝食を食べてから声をかけ、庭へと出た。

言いたいことはひとつだけで、聞きたいこともイエスかノーだった。


「明日から、ヒノエ・コチヤの家でアルバイトをしないか」
 
唐突な申し出に、さすがに面食らったように見えたものの、すぐに眉根がよりわたしを訝しむ顔があった。

その反応は正しいと思う。