かなしいかな、いや申し訳ないかな、どうやって外に出たのかを問い詰められ、ナギ・ユズリハはあの扉の鍵を渡すはめになってしまった。

さすがにしらは切れなかった。

だって正門も裏門も、セキュリティがしっかりしているから。

そこを破って出れるのならば、わたしたちはきっとその映像データだって改ざんしてしらばっくれるだろう。
 

それでも外出不可という拘束を破ったにしては、軽い処罰だと思った。

それにはキッカが答えてくれた。

「やっかいばらい、って言葉、知ってる?」
 

そう、わたしたちのことは面倒をみるのも嫌になったということ。
ほんとうに、すばらしい学園。
 

唯一許されたのは、ナギ・ユズリハが退院するときにつきそっていいということ。

ひとりで退院していくよりも、同年代の友人が迎えにくるほうが見た目がいい。
そういうこと。

 
荷物といっても何もない。

結局、彼の家族は誰もここにはこなかった。

そこにどんな事情があるのかをわたしは知らない。

だから黙っておくし聞いたりもしない。

ただ迎えに来て、一緒に寮へと戻るだけ。

それに明日で謹慎は終わる。


ナギ・ユズリハの手首にはまだ包帯が巻かれていたけれど、傷はたぶんもうほとんど良いのだろう。

その手首を見てから、横顔へと視点をうつす。

薄い色の瞳。すこしだけ顔色がよくなった、彫刻のような顔立ち。