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空が曇っていた。雨の匂いが近い。
夕立が降るのかもしれない。


「降るかも」そういう私にナギ・ユズリハは「それもいいと思う」とだけ答えた。
 
アサガオの蕾が並ぶ中庭を横切る廊下。

 
謹慎は三日延長されることになった。わたしもナギ・ユズリハも。
 

ただし理由はヤマギワを殴ったことじゃない。

謹慎期間中に外出したのが知られてしまったのだ。

制服は着ていなかったのに連絡がきたらしい。

つまりわたしたちの顔を知っている誰かが、あの日どこかでわたしたちを見かけてご丁寧に映像データまで記録を撮って通報してくれたということ。

まったく、暇な人間はどこにでもいるものだ。