ああ、わたしはこれでいい。
 

なにがはわからないけれど、素直にそう思った。

おなかの底から、温かくて気持ちのよいものがこみあげてくる。


「あなたに言われたくない」
 
たぶん、お互い、なにも相手のことを知らないのだろうけれど。
 
それでもきっと、どこかわかるものがあるのだろう。
 

わたしも自然と笑いがこみ上げてくる。

久しぶりにこんな気持ちになった気がする。

つられてナギ・ユズリハもまた笑う。

ふたりの間できょとんとしていたキッカでさえ、ついには笑い出したんだから、不思議なものだ。
 

ふっと、廊下の窓をなにかが横切った気がした。

おそらく鳥だろう。

でももしかしたら、じさつのかみさまが来てくれたのかもしれない。