まだ昼を過ぎたばかりのはず。

だけどここはとても静かで、雨の降る外は暗かった。
 

考えてみれば朝食も昼食も摂り損ねている。

でもそこまでお腹は空かない。

食べておいたほうが良いに決まっているけれど、正直あの匂いがまだ鼻の粘膜から離れない気がして食欲はわきそうになかった。

でもおかげで病院独特の、消毒液とすえた匂いは気にならない。

どちらがいいのかと問われても答えられないけれど。
 

ふう、ともう一度息を吐く。

夏なのに肌寒い。二の腕をさすっていると、かすかに音が聞こえた。
 

鼻に比べたら耳は平凡過ぎる。

だから耳をすませてあたりを伺う。

寝息とは違う、吐息。

もしやと思って、音をたてないように立ち上がり、扉へと近づく。

小さな気配。
 

開けていいものか、しばし迷った。

目覚めてわたしが顔を出したら彼はどう思うのだろう。

キッカなら寮長だしまだわかる。だけどわたしは。