幼いころは、これがどういう絵本かがわからなかった。
だけど絵を気にいっていたのか何度もめくったのを覚えている。
のちに兄に言わせるとそれをいつも読んでいる妹を心配して、こっちの絵本も楽しいよと幾度も新しいものを渡したそうだ。
それでもわたしは新しいのを読み終えていたらまたこれを読んでいたらしい。
今思えば、子どもが読むものじゃないだろうと思う。
絵本にした出版社もどうかと思う。
だけどわたしにとっては大切な一冊だった。
わたしの後ろにある窓を叩くのは雨だ。
じさつのかみさまはきっとここには来ない。
じさつのかみさまは、死を意識してはじめて芽生える生への執着をひとに植えつける。
それがわかったのはもう十を越えたころだったけれど、きっとそう。
だからここには来ない。
彼はそれを意識しても執着することができなかったからだ。
目の前にある病室のプレートには六がみっつ並ぶ。
その扉の向こうからはなにも聞こえてこなかった。
幸いにも命に別状はないらしい。
ただ浅い傷とはいえども、長い間出血していたのと水にあたっていたので体力をだいぶ消耗しているとのこと。
今はゆっくりさせてやるのが一番だと医師が言っていた。
プラス、目が覚めたらセラピストを寄こす、と。