じさつのかみさまは、夜中にこっそり少年の部屋にしのびこんだ。
少年は熱をだして苦しんでいた。
そこへそっと顔を近づける。
「死んだらいいじゃないか。死ねばなにもなくなって、自由になれるんだよ。苦いお薬もつらい咳もいやな夢もなくなる」
そう囁いて、少年の額を杖で叩く。
少年がくるしむのを見て、にやっと笑って、帰っていく。
じさつのかみさまは自分の家へと帰って、こう呟いてベッドに入るのだ。
「ああ、今日もいいことをした」
そして数日後、熱の下がった少年は薬を飲んでいた。
その横でお母さんがわらっていた。
少年は、もうお母さんにわがままを言わなくなった。
ご飯も残さず食べるようになった。
それでもときどき熱が出る。
でもその度に少年はこう自分に言い聞かせた。
「病気になんか負けるもんか」
じさつのかみさまはそれを知らない。
だけど今日もたくさんのひとの家にいって誰がいいか選んでいる。
ほんとうはもっと生きたいと願うひとを探している。