「それに、すごくたくさん食べるしね」
からかうようにくすくすと笑いながら正樹が言う。
「そ…そんなにたくさん食べません!」
「俺が作ったランチ、あんなに美味しそうに食べてくれるの絵美ちゃんくらいだったよ。お客さんが美味しそうに食べるの見てたら、作って良かったって思う。花束も一緒だろ?」
「あ…それは…はい。正樹さんの作る料理は、本当に美味しかったんです。美味しいだけじゃなくて、見た目もすごく綺麗で、何ていうか…すごく素敵だったんです」
きらきらと、澄んだ瞳で絵美が正樹を見上げると、正樹は困ったように首を傾げた。
「…ありがとう」
そう言って正樹は思わず絵美の頭を撫でた。びくんと絵美の体が跳ねる。
「あのときのチョコレートだけどさ」
赤信号で停車すると、絵美の顔を覗き込むように正樹は言った。
「本当に俺の為に持って来てくれたの?」
「も…もちろんです!名前は知らなかったけど…本当にずっと好きで…!」
勢い余ってそう言い終えたあと、絵美ははっとしたように手のひらで口をおさえた。
「はっ…えっと…。ああもう…あたし何言ってんだろ…」
正樹はそれを見てまたぷっと吹き出した。
「よかった。ユウトのことが好きだったんじゃなくて」
絵美はまた黙って俯いた。


