お互い一言も話さないまま、武と真希は散らかった部屋に滑り込んだ。
お互いの服を剥ぎ取るように乱暴に服を脱ぎ捨てて、夢中でキスを交わしながらベッドに潜り込む。
武は真希の背中に何度も何度も口づけながら、両手で乳房を揉みしだき、真希の細い腰に手を当て、月明かりを浴びて白く光る美しい背中を眺めながら、何もかもを忘れるようにただ夢中で腰を動かした。
何かに追い立てられるように真希を抱いてしまうのは、出会った頃からの癖だった。
短い時間で快感と共にすべてを吐き出したあと、深呼吸してようやく正気に戻ったときにはもうすでに、真希は涙を流しながら武の腕の中で眠りについていた。
よほど疲れていたのだろう。
普段は自分に涙を見せたがらなかった強がりな真希が、怖い夢を見た子どものように武の胸に小さくうずくまって眠っていた。
自分は一体何をしているのだろう。
武は眠っている真希の髪を撫でながら考えた。
麻里子を幸せにしてやることが出来なかったうえに、こんな風に傷ついた心を、自分が散々傷つけた女で癒やそうとするなんて。
真希の頬に光る涙の跡をぼんやりと眺めながら、麻里子もこうして自分を待ちながら、何度も泣いたのだろうかと想像するといたたまれなくなった。
誰よりも愛する麻里子を傷つけてまで、自分は何をしていたのだろう。
武は真希の細くしなやかな背中をそっと抱き締めた。
「…ごめんな…」


