本当にそうなのだろうか、自分が望んでいたのは本当にこんな結末なのだろうか、麻里子と別れて真希と寄りを戻せばそれで済む話なのだろうか。


いや違う。


麻里子を愛しているからこそ、麻里子に愛されているという自信があったからこそ、奔放な真希との付き合いを心から楽しむことができたのだ。


真希に別れを告げられたとき、何もなかったかのように家に帰ることができたのは麻里子がいたからだ。



「麻里子…、聞いてくれ。俺は…」



俺は、何だというのだろう。


今さら麻里子を愛しているなんて言ったところで、一体なんになるのだろう。


心優しい麻里子がこんなにも冷たい表情になるまでに、どれくらいの涙を流したのだろうか。


どれだけ寂しい思いをしたのだろう。


麻里子は結婚してから五年ものあいだ、眠れない夜をどれだけ過ごしてきたのだろうか。


ずっと知らないふりをして、辛い思いをして耐えていた麻里子。


俺が麻里子の人生を壊してしまったのだ。


男の幸せは妻を家に待たせて他の女と寝ることだなんて、俺なんかの馬鹿げた理想の為に、俺は麻里子を失うのだ。



「あたし、もうあなたのこと愛してない」



そう言った麻里子は、なぜか目に涙を貯めていた。