「俺さぁ、こないだ花屋の女の子とヤっちゃったんだよね」
猛は始め、武が何のことを言っているのかが理解できなかった。
「は…?花屋?」
喫茶店で向かい合い、煙草を吸いながら、学生時代とまるで変わらない軽い口調で突然吐き出された台詞に、猛は思わず嫌悪感剥き出しの顔で聞き返した。
「ヤっちゃったってお前…」
武はふっと笑いながら、灰皿にグリグリと煙草を押し付ける。
「だってさ、俺が結婚したばっかなの知っててやらせてくれるんだよ?しかも美人だし。最高だろ」
猛は何も答えなかった。
武は何ひとつ変わっていなかったのだ。
麻里子という素晴らしい女性と結婚しておきながら、平然と他の女に手を出し、それを学生時代と同じ軽さで自分に話してくるのだから。
「お前、何も変わってねぇな。幻滅したよ」
猛は一言そう言うと、立ち上がって喫茶店を後にした。


