エレベーターの前で真希はひとり立ち止まった。






涙が溢れて止まらなかった。





ずっと辛い思いをしてきたはずだった。



やっとこれで先の見えない関係を、終わりにすることができたのに。





武が自分を抱いた後、武が帰ってしまうのを見るのが辛くて、自分が先に部屋を出るようになったのはいつからだっただろう。



武にもっと会って欲しくて、年上の武に奢ってもらうことを拒否するようになったのはいつからだっただろう。



もっと早く出会っていればと何度思ったことだろう。



いっそ子どもを作ってしまおうか、そうすれば武を奪えるかもしれないと何度考えたことだろう。



武と繋がっていられるのは武と抱き合っているときだけだった。



そんな悲しい恋がようやく終わるのだ。



喜びはしても涙を流す理由なんてないはずだ。





今日で全部終わりにしよう。



武との思い出を全部、涙で流してしまえばいい。





真希はエレベーターの前で泣き崩れた。