「そう、今日病院へ行ってきたらね、もういつ産まれてもおかしくないくらいだって」



麻里子はリビングのソファーに深く腰掛けて、携帯電話に向かって嬉しそうに話す。



「うん、そうなの、男の子」



「本当は生まれるまで聞かないでおこうと思ったのよ?でもね、エコーでばっちり見えちゃったのよ」



そう言って、麻里子が幸せそうに笑う。



「うん。先生も笑いながら、『ああ、男の子ですね。』って。タケルさんも、男の子がいいって言ってたものね」



柔らかな表情で微笑みながら、麻里子は優しくお腹を撫でた。

妊娠9ヶ月目に突入し、赤ちゃんの成長度合も順調で、先生の話では予定日よりも早く産まれるかもしれないという。



「あたしたちの子どもが、やっと産まれてきてくれるのね。なんだか夢みたい」



麻里子は言った。



「ええ、じゃあ、もう切るわね。また連絡してね」



電話を切ると麻里子はリビングの壁に掛けられた時計を見ながらお腹に手をあてた。



「…元気にうまれてきてね…」



お腹の赤ん坊の確かな鼓動を感じながら、麻里子はゆっくりと目を閉じた。