日曜日の早朝。

まだ太陽が昇る前に目が覚めると、麻里子はベッドからするりと抜け出した。



安定期に入り目立ち始めたお腹のせいで、最近はなかなかよく眠れない。



リビングに移動してソファーにひとり腰掛けると、夫の武のいびきがここまで聞こえてくることに麻里子はくすっと笑った。



愛する人の子どもを産むのは麻里子の夢だった。



やっとその夢が叶うのだ。

麻里子はお腹を撫でながら、温めたミルクをゆっくりと飲む。


妊娠中にコーヒーはよくないと聞いたからだ。





夫に愛人がいることは、ずいぶん前から知っていた。



何度となく悔し涙を流したこともあったけれど、それももう過去のことだ。



夫が自分のことを愛していることは、嫌というほど解っていたし、離婚なんて考えたこともないだろうということも。



今は自分の中に宿った、小さな命を守ることだけを考えている。



麻里子はゆっくりとミルクを飲み干した。