「女性にプレゼントしたいんだけど、お願いできるかな?」
太一はあくまでも客として振る舞うつもりらしい。
真希はそれならとあくまでも花屋として、太一に営業スマイルを向けた。
「お花束ですね。ありがとうございます。どういったご用途でしょうか?」
真希がたずねると、太一は少し困ったような顔をした。
「ご用途?」
「はい。お見舞いなどではタブーなお花もありますから、できればどのようなプレゼントか教えていただいたほうが」
真希は店長らしく堂々と、カウンターから出て来て微笑んだ。
太一はうーんと唸って黙り込み、少し考えて思い付いたように言った。
「あ!ホワイトデーです、ホワイトデー!」
真希はそれを聞いてぷっと吹き出した。
「わかりました。ではどういった色合いでお作りしましょう?」
太一はまたしてもうーんと唸って黙り込む。
真希はまたそれを見て、ふふっと笑った。
「では、その女性はどんな雰囲気の方ですか?よく身につけていらっしゃるお洋服のお色ですとか、お好きなお色を入れると喜ばれますよ」
「…ああ…えーっと…黒?が多いかな…服は…」
太一は頭を掻いている。
「…黒…ですか」
真希は呆れたように言った。
「…どんな女性ですか?雰囲気とか」


