店を出ると、冷たい空気が真希の身体を包み込んだ。
ふわふわと降りてくる雪の白い結晶が黒いフリースに降り積もり、点々と水滴になって消えていく。
真希はゆっくりと深呼吸をして、シルバーのキューブに近付いた。
車の前に立ち、コンコンと運転席の窓を叩く。
待ちくたびれて眠りかけていた太一がゆっくりと顔を上げ、運転席の窓が開く。
「おう…お疲れ」
太一がいつものようにそう言った。
それだけで真希は泣き出しそうな気持ちになる。
「寒いだろ?乗れよ、真希」
太一はそう言って、助手席を指差した。
愛してはいけないと思っていた。
抱かれたいと願ってはいけないと思っていた。
ずっと心の中に閉じ込めていたこの気持ちは、もう隠さなくてもいいのだ。
「タッちゃん…」


