テーブルに向かい合って、いつになく真剣な眼差しで絵美が正樹を見詰めている。



「…どう?」



絵美が恐る恐る尋ねる。目の前には白いお皿に盛り付けたトマトとベーコン、茄子、きのこを使った絵美の始めての手作りパスタ。



その記念すべき一口目を、真剣な表情で正樹が味わっている。



「絵美ちゃん」



正樹が言った。



絵美は身を乗り出して、不安げな表情で正樹の感想を今か今かと待っている。



「そんなに見詰められたら俺、顔に穴があきそうだ」



正樹はぶっとふきだした。



「大丈夫、すごくおいしいよ」



絵美はほっと胸を撫で下ろしたように「よかったあ…」と呟いた。



「まあ、俺っていう名コーチがいるからね」



正樹は得意げに言う。絵美の記念すべき初の手作りパスタは、材料、作り方からすべて正樹コーチの監修によるものなのだ。



「でも、結婚したら料理を作るのはやっぱり俺かな。絵美ちゃんのおいしそうな顔を毎日見たいしね」



正樹はそう言ってにっこりと微笑むと、「それってもしかしてプロポ…」と言いかけた絵美の唇に、そっと優しくキスをした。