父親に連れられて訪れたある公園には、一面に優しい薄紫色の秋桜が咲き乱れていた。
「ほら太一、あそこを見てごらん」
父親が、そう言って遠くの方を指差した。
そこには、秋桜畑の中で無邪気にはしゃぐ、自分と同じくらいの女の子と、それに寄り添うように歩くひとりのお婆さん。
あまりに遠くて顔まではよく見えないけれど、とても綺麗でかわいらしい女の子だなと太一は思った。
父親は、彼女を指差して太一にこう言った。
「太一、お前にあの子を守ってあげてほしいんだ」
「守る?ぼくが?」
太一は父親を見上げて聞き返した。
「そうだ」
父親はしゃがみこむと、まるで友達のように太一の肩に手を回した。
「父さんからのお願いだ。あの子が悲しいとき、辛いとき、お前が側にいて守ってあげてほしい。太一、これは、男の約束だ」
父親はしっかりと、太一の目を見てそう言った。
「男の…約束…?」
「ああ、そうだ。母さんには内緒だぞ。これは父さんと太一の、一生に一度きりの男の約束だ」


