トルコの蕾






「て…店長ぉぉぉ~っ!!」




真希が店に戻ると、絵美が涙目になりながら走り寄って来た。




「おそかったから警察に電話しようかと…ストーカーにさらわれたんじゃないかってもう心配で心配で…」




ぐすんぐすんと鼻をすすりながら絵美が真希に抱きついた。




「ごめんね、遅くなって。ぜんぜん大丈夫だったわよ?ただのあたしの熱狂的ファンだった」




真希は笑いながら、絵美の頭をよしよしと撫でた。




知らなかった母親と父親の真実。




そして、父親と太一との関係。




何もかも、自分の想像とは違っていた。




母親は父親に捨てられた訳ではなかったのだ。




父の妻子を死に追いやった罪悪感から、自ら一生ひとりで生きる道を選んだのだ。




この人はもうすぐ死んでしまうの、と太一の母親である彼女は言った。




だから最後に、ずっと大切に思っていたあなたに、真希さんに会わせてあげたかったの、と。