「あなたが店長さん、よね…?」



驚いて何も答えられないでいる真希に、女性はもう一度尋ねた。



優しげな目元といい、すっと通った鼻筋といい、見れば見るほど太一によく似ている。


体つきはふっくらとしていて、優しさと温かさが滲み出ているような人だと真希は思った。自分の母親とは正反対の外見だ。



きっと彼女が、太一の母親であり、織田輝真の妻なのだろう。



「こちらに受け取りのサインをお願いします。お花はどちらに置かせていただけばよろしいでしょうか」



真希はなるべく事務的に、表情を変えずにそう言ってペンを差し出した。



女性はペンを受け取りながら、真希の顔をまじまじと見つめている。



彼女は、太一の母親は、自分の正体を知っている。そう思った。



目の前にいる花屋が、夫と不倫相手の娘であるということを。



「本当に、輝真さんにそっくりだわ」



女性が優しい目を細めて言う。彼女にとって、恨んでも恨みきれない相手に違いないのに何故そこまで優しい目で見詰められるのだろう。



「真希さん、突然ごめんなさいね」



受領書にサインをして花を受け取ると、彼女は申し訳なさそうに言った。



「花を頼んだのは、わたしなの」