洗った髪もまだ乾ききらないまま、武と真希はベッドに転がり込んだ。
新婚夫婦の為にあるような、フランス製の真新しいダブルベッドは、もう何百回と抱き合ってきたふたりには不似合いなようにも思えた。
「こんなに高いベッドにしなくてもいいじゃない」
ふたりで訪れた家具屋で真希は武にそう言ったけれど、ベッドの善し悪しでふたりの関係の善し悪しが決まるものですよ、という店員の言葉がやけに真実味を帯びていて、このベッドを買うことに決めたのだ。
そしてその言葉はまさしくその通りだった。
セックスをして、そのまま抱きしめあって朝まで眠ることを、真希は今まで知らなかった。
不倫相手であった自分には、武と朝まで眠る権利などなかったし、朝目覚めた時に隣に誰かがいることがこんなにも安心するものなのだということに、真希は驚いていた。
武という恋人がいながら、こうなるまでの自分は本当にひとりぼっちだったのだ。
けれど心のどこかでそれが太一であったなら、どれほど幸せなことなのだろうと真希は時折ふっと思う。
「…武?」
「どうした?」
真希の呼びかけに、開いた両脚の間から武が答える。
「あたし、もうひとりぼっちじゃないのよね?」
「ああ。真希には俺がいるよ」
そう言って、武は真希の両脚の間に顔を埋め、優しく舌を動かした。
安らかな快感の波に溺れながら、真希は太一の顔を思い浮かべていた。


