どれくらい眠ってしまっていたのだろう。
絵美が目を覚ますと時計の針は真夜中の二時を指していた。
テーブルに置いた携帯電話に目をやると、黄色のランプがチカチカと光っている。
「…もしもし…」
寝起きの声で絵美が電話に出ると、もしもし、と聞こえたのは正樹の声だった。
「今から、会いに行ってもいいか?」
絵美はびくっと体を起こし、「えっ、」と言って「…うん」と頷いた。
きっと別れを告げられるのだ、と絵美は思った。
今日が正樹と会える、最後の日になるかもしれない。
そう思うと、寂しくて悲しくてやりきれない気持ちが押し寄せて来た。
これでいいはずなんてない。
だって、こんなにも、彼のことが好きなのだ。
もう一生、こんなに誰かを好きになるなんてことは無いかもしれないのだ。
絵美は引き出しから、初めて買ったピンクの下着と、正樹の好みに合わせて一緒に選んだ服を着た。
今日で最後になるかもしれないのなら、後悔しないように自分の気持ちを全部、余すことなく正樹に伝えよう。
彼に恋をしたことで、たくさんの幸せをもらった。強くもなれた。ダメダメだと思っていた自分自身にも少し自身も持つことができた。
もし振られたとしても、彼に感謝はしても、憎むことなんて何一つない。
絵美はゆっくりと瞬きをして涙を拭った。


