真希は真新しいキーで、カチャリと部屋の鍵を開けた。



「おかえり、真希」



先に帰っていた武が、ソファーで難しそうな本を読みながら真希に言った。



「遅かったね、ピザか寿司か何か頼もうか?」



「いらないわ。武は?何か食べた?」



ドサリと重いバッグを床に置き、ジャケットを脱ぐと、立ち上がった武が真希を後ろから抱きしめた。



「俺も、いらない」



そう言いながら、後ろからまわした手で器用にブラウスのボタンを外していく。



「ちょっと、やめてよ。すごく汗かいたから、先にシャワー浴びさせて」



真希が武の手を振りほどきながら言うと、武は笑いながら自分の着ていたシャツを脱ぎ始めた。



「なら、俺も入る」



「シャワーよ?お湯入ってないもん」



「一緒にシャワー浴びればいいじゃないか」



武が言うと、真希は呆れたようにふふっと笑う。



「何それ、効率悪くない?」



「そんなこと気にしていたら、幸せな新婚生活は送れないよ」



「結婚なんてしてないじゃない」



武はああ、そうだった、と言いながら、呆れ顔の真希の手を引いてバスルームへと向かった。