一部始終を見ていた真希が、弱気な絵美を見かねて呆れ顔で言った。
「あのね、お姉さん」
女が驚いたように真希を見る。
「あんた何?あたしになんか文句でもあるん?」
真希はため息をつきながら、自分と同じくらいの年齢であろう濃い目のメイクに下品な金髪の女に向かって言った。
「相手が別れたと思ってるなら、それはもう別れてるってことなの。あなたがいくら別れたつもりなんてないって思っててもね」
「は?あんたあたしに喧嘩売ってんの?」
女は勢い良く真希に近づいて来る。きつい香水の香りが鼻をつく。
「喧嘩なんかする気ないわよ」
真希はふうとため息をつきながら言った。
「あなたじゃ絵美ちゃんの相手にならないと思うけど」
女は一瞬、絵美を睨むように見て、ふっと息を漏らした。
「そうやな。正樹もあたしみたいな女が嫌で、あたしとは正反対のあんたと付き合ったんかもしれへんわ」
絵美が何も言えずにいると、女は絵美ににっこりと笑いかけた。
「びっくりさせてごめんな。あたし、まだ正樹が好きなんよ」
濃いめのメイクで解らなくなってはいるけれど、本当は綺麗な人なんだな、と絵美は思った。
レインボローズも、もとは綺麗な白い薔薇なのだから。


