「あの…、正樹さんのお知り合いの方ですか…?」
恐る恐る尋ねると、レインボーローズの女はきつめのアイラインで縁どられた大きな目を見開いて言った。
「お知り合い?彼女や、カーノージョ!」
「か…彼女…ですか…」
あまりの迫力にとぎれとぎれの声でようやく聞き返す。
女は長い髪をかきあげながら、面倒臭そうにふんと笑いながら言った。
「そ、正樹から何か聞いてる?あ、もしかして『元カノ』とか?」
正樹の彼女、それは正樹が言っていた、『ひとりだけ』の彼女なのだろうか。
「あたしは、正樹と別れたとは思ってへんで」
そう言ってにっこりと笑う、艷やかな唇。
もっとショックを受けてもいいはずなのに、どうしてこんなにも冷静でいられるのだろうと絵美は思った。
きっと今までが幸せ過ぎたから、夢みたいな時間だったから。
これが現実なんだと言われても、そうなのだろうなとすんなり受け入れてしまうのだろう。
弱くて消極的で自信がなくて綺麗でもない、こんな自分が正樹の彼女だということのほうが、よっぽどおかしな話なのだから。


