絵美はダリアが大好きだ。
少し傷みやすいのが難点ではあるけれど、こんなにお洒落な花は他にはない、と絵美は思う。
とくに黒蝶という品種は、大きく紫がかった艶のある黒いダリアで、それが店に並んでいる時は接客中であってもつい見とれてしまうほど、強烈な存在感を放っている。
今日もオレンジがかったピンクや赤、黄色など様々なダリアが店頭に並び、絵美はため息を漏らしながらそれらを眺めていた。
そのときだった。
花の香りを打ち消すような、強めの香水の香りとともに勢い良く店内に入って来たのは、金髪のロングヘアーを靡かせた大人の女性だ。
花で例えるならレインボーローズ。
人工的に造られた、七色の花弁をもつ薔薇だ。
その女性が、たくさんの花には目もくれず、真っ直ぐ絵美に向かって歩いてくるのだ。
「い…いらっしゃいませ…」
絵美はその迫力に思わず後ずさりしながら笑顔で言った。
「あんたが浅井絵美?」
レインボーローズの女は、関西風のニュアンスで吐き捨てるようにそう言うと、ふっと笑ってこう言った。
「えらい子どもっぽい女捕まえたもんやな、正樹も」
絵美はダリアの束を片手にその場から動けなくなっていた。


